1 :1:2008/08/13(水) 20:34:22.55 ID:EhlsHfpa0
作:太宰治 「駆け込み訴え」
予備知識
太宰治が1941年に奥さんに口述記述してもらって作った作品
新潮文庫「走れメロス」に収録されている。
わずか18ページの短編
内容は、キリストを売るユダの内面を描く
しばらくは前編・中編のあらすじを
2 :1:2008/08/13(水) 20:36:46.20 ID:EhlsHfpa0
これまでのあらすじ
報告書:手配されている、とあるカルト教団の教祖の居場所を教えた者の記録
紀元前の在る夜、一人の男が訴えにきた。
/ ̄ ̄ ̄\
/ノ ヽ、 \ 申し上げるお。申し上げるお。
/ ( ○)}liil{(○) \.
| (__人__) |
\ ヽ |!!il|!|!l| / /
/::ノ"''フ:ノ|゙ x ''|ヽ!:::_,,,L,,ノ,,ノ_ノ゙>i、
. i/ヘ" ムノ:::::| i::::! |-''"::::/ ゙ヾノヽ
/(:::::::゙ソ"_;;;;;;ノ: :V: :ヽ,,.::''"ヽi、 をノ
(::::ヽ,ノ"!,,_::;/: :i: :i: : :ヽ_;;:::::"ヽi、
^゙''" /::::;シ: : : : i , -ii !、\::;;ノ::::)
(::::ヽへ、: : : i i/ ゙''ヽ,/
ヽ" | ゙''' -r| | !゙
3 :1:2008/08/13(水) 20:40:05.85 ID:EhlsHfpa0
男は今話題になっている自称救世主(メシア)の弟子であり、師の密告にやってきた。
男は師を恨んでおり、これまでの苦労やら、いかに自分が頑張り、けど評価してくれない等と、愚にもつかないことを、ぐちぐちとしゃべった。
____
/ \ 旦那さま。あの人は酷い。酷いお。
/ _ノ ヽ、\ はい。厭な奴だお。ああ。我慢ならない。
/ (○) (O) \ 生かしておけないお。
| || (__人__) ..|
\ ノi ! |. /
/ し' `⌒´ .ノ
| ./ ./
4 :1:2008/08/13(水) 20:43:33.59 ID:EhlsHfpa0
しかし、時間がたつと今度は師の素晴らしさを語るなど、
支離滅裂な供述を始めた。
____ けれどもやる夫は、恨まないお。あの人は美しい人
/_ノ ヽ_\だからだお。
/( >) (<)\
/::::::⌒(__人__)⌒::::: \
| |r┬-/ |
\ ` ̄'´ /
5 :1:2008/08/13(水) 20:47:11.60 ID:EhlsHfpa0
黙って聞いていると今度は、師の教義を否定し始めるなど、
話にいっこうのまとまりがない。
___ 父を捨て、母を捨て、故郷も捨てて、あの人につい
/ \ てきたんだお。
/ \ , , /\ 天国も神も信じない。どうしてあの人がイスラエルの
/ (●) (●) \ 王なものか。
| (__人__) | 馬鹿な弟子どもは、あの人を神と信じて、
\ ` ⌒ ´ ,/ あの人から神の福音を伝い聞いては、浅ましく
. /⌒〜" ̄, ̄ ̄〆⌒,ニつ 欣喜雀躍しているお。
| ,___゙___、rヾイソ⊃
| `l ̄
. | |
6 :1:2008/08/13(水) 20:50:04.22 ID:EhlsHfpa0
で、また暫らくしゃべった後、話は最初に戻り、また師の悪口を言い始めた。
いっこうに居場所を教えてくれない。
____
/ノ ヽ、_\ あの人を殺して下さいお。旦那さま。やる夫はあの人の
/( ○)}liil{(○)\ 居場所を知ってるお。ご案内するお。あの人はやる夫を賤し
/ (__人__) \ め、憎悪してるお。嫌われてるお。やる夫はあの人や、
| ヽ |!!il|!|!l| / | 弟子たちのパンのお世話をし、日々の飢渇から救っ
\ |ェェェェ| / ているのに、どうしてあんなに意地悪をするんだお。
7 :1:2008/08/13(水) 20:53:38.65 ID:EhlsHfpa0
師に見切りをつけた理由が、じぶんが好きだった女を取ろうとしているから、
と信じられないことをほざく。
こちらの気配に感じたのか、昨日の話を始めた。
____
/ \ 旦那さま、泣いたりしてごめんだお。
/ _ノ ヽ、\ もう泣かないお。
/ (○) (O) \ はい。はい。落ち着いて申し上げ
| || (__人__) ..| るお。
\ ノi ! |. /
/ し' `⌒´ .ノ
8 :1:2008/08/13(水) 20:57:30.50 ID:EhlsHfpa0
それは、宮に入った教祖が商人たちに乱暴をし、滅茶苦茶なことを言ったことだった。
男は、師が発狂した振りをして殺されたがっているだから自分が殺す、と私には理解できないことをいう。
___ /´ ̄ ̄`ヽ
,. '´ ``丶、 ,.イ-――‐- 、 |
. / -- 、 \ ____, '´/_,. ---- 、 ∨
. / / \ \ 、 `丶、_ / - 、 \
/ { \ `丶、 ヽ.` ー一'  ̄ \
./ .| '. 、 \ー/-- 、 !ヘ ,. -―-ヽ
i | ! \\ ゙vrニミヽ!| `丶、 /,. -―-、
| | !'. '.><ー---、 !、:::::::ハ ! \ `  ̄,.イ'´ー- 、 ∨
| | '. \ヘ.,rァニミ、 ヽ| ヾZソ |! ` ー一'´/ ‐- 、 `ヽ
| | ヘ. ト{ {::::::ハ , ハ. ,∠_ ヽ '.
! \\ゞZソ '⌒ヽ //:\ _ /,. -‐::ヘ、 '. !
l ヽ. \丶、 ヽ._ ノ,.イ::::::,. '´:::::::/‐-、:::::::::::`ヽ、! j
ヘ \ \_≧ニ7スア⌒ヽ´:::::::::::/ ヽ `丶、::::::::::\/
ヽ. `二二..__ `ヽ、 丿--- ' ヽ ヽ. `丶、:::::\
 ̄__/__::::>、 ヘ. '.`===キ== '. ヽ:::::::\
} 「:::::::::::::::::::::::::::/ヘ. }==、、 -- ヽ-、 !‐ァ-― !:::::::::::
.「禍害なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、
汝らは白く塗りたる墓に似たり、
外は美しく見ゆれども、内は死者の骨と
さまざまな穢れとに満つ。」
10 :1:2008/08/13(水) 21:00:31.28 ID:EhlsHfpa0
手配されている情報を聞き、しかも銀三十の褒賞がついているため、
一刻も早く師を殺さなくてはならないと決意したとのこと。
それなどうしてここに、密告にきたのだろうか?
|___
| \ 祭司長や民の長老達が、こっそり集まって
| ,ノ \あの人を殺すことを決議したと、
| ( ●)u \やる夫は聞いたお。
|人__) |
|⌒´ /
(⌒ー─' )
11 :1:2008/08/13(水) 21:04:09.35 ID:EhlsHfpa0
そのうえ、愛ゆえに殺すという。何言ってんだ。偽善者が。
素直に金が目的と言えばいいのに。
/ ̄ ̄\ やる夫は永遠に、人の憎しみを買うお。
/ \ けれども、この純粋の愛の貪欲の前には、
/:::::::::::::: ヽ どんな刑罰も、どんな地獄の業火も問題ではないお。
|:::::::::::::: |
ヽ:::::::::: /
/:::::::::::: く
|:::::::::::::::: \
|::::::::::::::: |
12 :1:2008/08/13(水) 21:08:03.26 ID:EhlsHfpa0
祭りのため、宴会を開いていると突然師が、服を脱ぎ、弟子たちの足を洗い始めたらしい。男はこれを、師が不安に陥り弟子たちにすがりつきたい気持ちになっていると、推理した。羨ましい・・・・・・
,. -‐―- 、_
/ \
/ / ヽ、
/ { ! \ ヽ
| / / ハ V ト、 ヽ ヽ !
| | ィヤT ト、| ィヤT ト、 | i |
Vハ | ,|rそト、 Vヽ/ rそト、ハ! ! !
八トヽ Vrリ トrリ イ リ |八
/ | ハ '¨´ 、 `¨ / | \
/ | 人 r ¬ / 八 \
/ /| ハ>、 ` , ィ/ / \ \
/ / i ∨_} `¨ { i { ヽ ) _,_,__
{ { } | `¨|! ! } /「.}JJJ!
\ )// | ` ´ |! ハ / / { ) ノ
} / / / ハ. |\ { 〉 /
/ / / / } | ヽ ∨ ./
/ / | f个个vヘィV弋ニZ} | | / /
/ ./ | {::::::::::::::: :::::::::::::::::::} | ', / ./\
/ / /| Vー―个ー-、::::::/ ハ V / \
' / / / ', `7 ', { / )
| / /弋¨´ | | \___ノ ヽ /
/ / ___> / | ∠_ ) /
∧_ / / <__ / !、 _/ / /
{_/ /7 <___/ :i | \ > ( (
,. ' / < / / / ', `ー―く `ー‐-イ
_ ノ´ / 从. / / / V | ト---'黙って上着を脱いだんだお。
13 :1:2008/08/13(水) 21:12:03.83 ID:EhlsHfpa0
この行為によって、男は信仰を取り戻したとのこと。
え、じゃあどうして師を売りにきたの?
ノ L____
⌒ \ / \ もう嫌だお。あなたを売るなんて、
/ (○) (○)\なんて無法なことを考えてたんだお。
/ (__人__) \
| |::::::| |
\ l;;;;;;l /l!| !
/ `ー' \ |i
/ ヽ !l ヽi .' , ..
( 丶- 、 しE |そ ・;`.∴ '
`ー、_ノ 煤@l、E ノ < ,:;・,‘
レY^V^ヽl ’ .', ..
14 :1:2008/08/13(水) 21:15:05.22 ID:EhlsHfpa0
と思っていると、師が自分を汚いと非難したらしい。
教祖は足を洗った理由をこうしゃべったとのこと。
__
_, '"´ `丶、
/ \
/ ,' / / / ヽ `ヽヽ
l l j __ // ,イ 、ハヽ }! ハ
l l 「 j_从7ヽハ !七大 ` } リ }/
| l Vf゙i圷/ jl ノィアト、ヘ// /
j l l V_:ソ ´ V:リ /jイノ
,' ハ ヘ. ' ` ,' l !
/ / l ヽ ー ‐ .厶 |ハ
//' ∧ 弋ト 、 __ , r<7 l ヽ
/ / / ∧ Vー、 Kヽ{ ヽ ヽ
/ /./ /¨} ',__∧_j_l::::ハ \ }/
,′ l { /:::/ /::::ヾ ☆Y:::ハ X
{ V r'::::::/ /::::::::::\__j:::::入xぅ/ \
ヽ l { :::/ /::::::::::::::::::V://∠ ',
} ! j/ /:!::::::::::::::::::∧V _二}:ヽ /
/ / { 〈:::::::l:::::::::::::::/:| j/ -ーソ:::ノ /
/ / |ヽ \:::l:::::::::::/∠/j rテ':〃 ( ヽ ,
. / / 、__jノ ∧{::::::/ ,/ { _/:::ハ `ー彡
/ 〃 、__ > /::;>'´ /! ∨ヘ::::ヾ::\ < _
ヽ {{ =ァ 彡<::/ { >く{ ヽ:::::ヽ:::::ユ=―'´
あの人も少し笑いながら、「いいのよ、足だけ洗えば、もうそれで、
あんたの全身は潔いのよ。あんただけじゃないわ。
みんな汚れの無い、潔いからだになったの、
けど・・・・・・」
15 :1:2008/08/13(水) 21:18:21.15 ID:EhlsHfpa0
/ / l / ハ \ 、 ヽ ヽ
i /l l /l / / \ ヽ 、 ヽ i i i ヽ l
l i l __l_l_l_|i___| ll. リ i li__A-ナ、 l l lリ
l l i l l ヽ\ ¨ヾー-- レl ナレ l /l / /l/ /
l ハ ヽ ヽ,ヽ- ,==-_ ノ /_,∠、l/ //ノ
l l ヘ ヽ iヾ`(::ヽ-ー)`  ̄ '7ヽつ,ヾィ' '/イ
リ ヘ \ ヽ  ̄ ̄ ̄ `ー-' / / l
/ ∧ ヘ \ヽ 丶 .i / lヘ
/ / ヘ i ヽヽ __ / / il \
/ ´ 〉 l ヽヽ '、二二ン / / l \
./ / ヘl ヽヽ 、 _ ¨¨ , ・ '/ / ヘ \
, - 、/ l ヽヽニ―=、' l¨¨, `l / ヘ \
/ l i i\ /ヘ l / l i ヘ、_ ヽ
/ l l l \ゝ'-'-- 、l l \ヽ l l
といいかけてすっと腰を伸ばし、瞬時苦痛に耐えかねるような、
とても悲しい目つきをなされ、
16 :1:2008/08/13(水) 21:21:07.02 ID:EhlsHfpa0
__, -ー- 、
/ / ヽ` 、
. /. l l从、 从、| | l
\!」>ヽ'< '7 |!
ノ| __ / ∧ヽ
// >、 _`イ l \\
. 〈 人 トr十一) ヾヽ 〉 〉
ヽl/ノ 〉夲/ /_::Ll. /
r/ /ヾ〈 〈:::::::::\\
_/ ./:::/::||、\ \::::::::! \
/ イ 〈:::/::/||::ヽ::) ヽ::::ト、 ヽ
/ / ヽ トゝ::/::||:::/ l ):l \ 〉
l | f´ヾ`:::/::::∧彡__ノ/!/::::| l /
\ |::::::::::/::::::| !\:::::\::::\:l //
すぐにその眼をぎゅっと固くつぶり、つぶったまま言ったんだお。
17 :1:2008/08/13(水) 21:25:22.35 ID:EhlsHfpa0
/ / / / 〃 / ハ ヽ \ V }| |
l { / │ / ! { } i } } レ | |
| ハ | j { | ヽ. j │ /! / ,′! |
| l l l 八 ヽ∧ ヽ ∧ | / l ,イ /" | |
| l 丶 ヽ{ \ { \ l _/ 人 レ│/ ! |
| | ヽハヽ : :::::::::::::::ヽ j ̄/ ̄`Y´ ̄/イ j l
l l ∧ ::::::::::::::::::::::::j/::::::::::::|::::::: / ,′ 八
/ ヘ ヘ、 :::} │ / / ′ ヽ
ノ ハ lヽ、_ </ / \
「みんなが潔ければいいのに」
と男を告発し、
「うん?お前か。なんの用だ?え、なに金を返す?罪のない人を売ってしまっただと。
そんなこと知るか自分で始末しろ。そんな汚い金なんかいらん。
あっこら、投げ捨てるな。まったく」
あらすじ 終了
後編
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